雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。

体は社会人、心は自由人。三十路間近のネコ好き。日記や日々考えたこと、社会問題、ときどきサッカー。

少年事件の実名報道について。世の中の流れが怖いってこと。

少年法の存在意義ってなんでしょう。

「少年少女による犯罪が残虐化している」という印象を持っている人も多くいるようですね。実態、というか凶悪犯罪の件数自体は減っているようですが、そのように実感している人は少ないんではないでしょうか。

 

今日は、ヤフーで行われてるアンケートで驚く結果が出ていたので、それを紹介します。

 


こちらのページでは、少年事件の実名報道を規制する法律が必要かどうかというアンケートをやっており、3月12日時点で実名報道を法律で規制する必要はない」と回答した人がなんと約75%となっています。

実名報道に罰則を設けるべき」と回答した人は約10%、「現状のままでよい(罰則なしで規制)」と回答した人は約12%でした。

 

そもそも少年法の目的とは?

少年事件の実名報道を規制しているのは少年法の第61条です。

では、少年法の目的とはいったいなんでしょうか。少年法の第一条はこんな感じになっています。

第一条  この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

 

少年法の目的は、少年の健全育成と、非行少年の矯正ですから、少年法を改正するとしたら、この目的が、より良く達成できるような改正がなされなければなりません

少年法改正の目的と前提(心理学総合案内こころの散歩道)

つまり、「成人への刑罰と比較して、少年へは罰を与えるよりも、更生を促すことを重視すべきだ」 という考えのもと、少年法が制定されているのだと思います。

少年法についてはこちらの記事でも言及しています。

 

実名報道はどのような影響を及ぼすのか

さて、実名報道をすることが加害者となった少年にどのような影響を及ぼすかというと、更生をし、社会復帰しようとしたとき、社会復帰の足かせになってしまうと思うんです。

採用面接なんかで「あ、この子、なんとなく名前聞いたことあるな」ってなって、google先生で検索をするなんていうのはよくあることですよね。今や人事はtwitterfacebookもチェックしているぐらいなので。

そんなことになったとき、少年法によって更生できたはずの少年が、実名報道がされたことで、ちゃんとした社会生活を送れなくなってしまうことになります。この状況は少年法の理念に反しますよね、更生、ひいては社会復帰を促すのが目的なんですから。

 

なぜ実名報道を求めるの?

なぜ法律に反して実名報道を求めるかというと、その理由は2つあると思います。

表現の自由の保障

これはすごく難しい問題ですが、高裁にて判決が出ているようなので、紹介します。

Q:少年犯罪を実名で報道した事例で、裁判で争われた事件がありますか。

A:1998年に大阪府堺市で発生した当時19歳6ヶ月のシンナー少年が引き起こした「堺通り魔事件」でした。女子高校生、幼稚園児とその母親に包丁で切りつける等して、園児を死亡させ、二人に重傷を負わせた事件でした。この事件を取り上げ、関係者に取材して、少年の実名を含むルポルタージュを掲載した月刊雑誌の編集長と執筆者を、”少年”とその弁護士は、プライバシーの侵害で大阪地裁に訴えました。ちなみに、その少年は裁判の時にはすでに成人していました。 第一審の大阪地裁は、原告少年側の主張を認めて、250万円の賠償を命じましたが、第二審大阪高裁では、2000年に地裁判決を取り消す判決を下しました。少年側は、最高裁に上告したのですが、後に上告を取り下げて、高裁判決が確定しました。 この高裁判決は、「表現行為が社会の正当な関心事であり、かつその表現内容・方法が不当なものでない場合には、その表現行為は違法性を欠き、違法なプライバシー権等の侵害とはならない」と述べて、憲法の「表現の自由」が実名報道を禁じた少年法第61条に優先すると述べています。 この高裁判決は、憲法第21条の「表現の自由」と個人の尊重を定める憲法第13条の衝突について、慎重に検討し、熟慮された判断を示した優れた判決です。未成年者の実名報道について/京都府ホームページ

つまり、社会の関心が高く、表現内容等が不当でなければ表現の自由が上回る(=実名報道が許される)ということです。

これは政府としても仕方のないことで、当然、法律よりも憲法が上回りますから、このような場合には実名報道を許さざるを得ません。

 

少年法で守られている加害者が気に入らない=私刑としての実名報道

加害者への私刑については、この記事でも述べたんですが、「自分が気に入らないから」実名報道をして私刑を執行するという考えは間違っています。

少年法の目的は更生を促すことであり、このような私刑はそれに反するものです。

ヤフーのアンケートのコメントを見ても、「加害者に人権など無い」と考えている人が非常に多いんです。人は誰しも過ちを犯すことがあります。もしかしたら不幸な生い立ちゆえに犯罪に手を染める少年もいるでしょう。

当然、その犯した罪の程度によっては実名報道もやむをえないのかもしれません。

しかし、75%の人は「とにかく実名報道を規制する必要はない」と考えていることに僕は驚いています。

 

まとめ

ほかの記事でも書いてますが、人とか社会とかってそんな単純じゃないと思うんです。実名報道をどうするかも、基本的には程度によって判断すべきです。

そういう意味で、今回のヤフーのアンケートにおいては、「その他」を選び、「程度によっては実名報道もやむなし」がもっとも適切だと、僕は考えています。

 

最近、こういう世の中の流れ、みたいなのがすごく怖いなって思うときがあります。確かに加害者が悪いことに議論の余地はありません。しかし、少年少女には更生の可能性があり、そのような人たちのチャンスを根こそぎ奪う必要もないんじゃないでしょうか。

 

僕は両親もいましたし、あまりグレる要素もありませんでした。そういう環境でもありませんでした。しかし、二歩か三歩間違えば、何らかの理由で非行に走ったかもしれません。

今の僕があるのは、僕の力だけじゃなく、周りの環境のおかげです。周りのみんなが暖かく僕の成長を見守ってくれたから、僕はまっすぐ成長できたのだと思います。

 

そうやって考えて、もう少し、暖かい目で見てもいいんじゃないでしょうか。

 

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