雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。

体は社会人、心は自由人。三十路間近のネコ好き。日記や日々考えたこと、社会問題、ときどきサッカー。

【感想】色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(村上春樹)

 日本を代表する作家である村上春樹さんの「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読みました。村上春樹さんの作品はノルウェイの森だけ読んで、それが合わなかったため、他の作品には手を出してきませんでしたが、タイトルが気になったので、ついつい手に取ってしまいました。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

 

 

内容(「BOOK」データベースより)

良いニュースと悪いニュースがある。多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。あるポイントまでは…。

 

 村上春樹節、といえばいいんでしょうか。全体に彼らしさが散りばめられていて、「案外、嫌いじゃないな」と思いました。ノルウェイの森を読んだのは確か、高校生のときだったと思うんですが、どこか気に入らなかったんですよね。文体が気に入らなかったのか、上下巻を読んだわりには何も得られなかったからガッカリしたのか。

 「あの村上春樹の代表作だ!」とハードルを上げすぎたのもあるのかもしれませんが、とにかく思っていたよりもおもしろくなかったという感想でした。今読めばまた違った感想なのかもしれませんが、とにかくそこから村上春樹を読もうとは思わなくなりました。

 その「村上春樹節」ですが、これが意外と僕にとっては良かったです。冗長的とでもいえばいいんでしょうか。人によって好みが分かれるんだと思いますが、僕は好きです。僕は伊坂幸太郎さんも好きなんですが、まあ似てなくもないかなって感じで。

 

 ただ、やっぱりそんなにずば抜けてすごい作家さんかというと、そうでもないと思うんですよね。この作品もおもしろくないわけではないんです、決して。ただ、村上春樹さんの場合は、ハードルが上がりすぎている部分があると思います。それさえなければもっと純粋に楽しめるんですが。

 

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 作品の中身に触れると、主人公の多崎つくるが高校時代に仲の良かった人たちに久しぶりに会いに行くっていう話です。こう書くとすごく単純なんですが、久しぶりってところがキーなんです。みなさんも「あのときあいつはああ言ってたけど、俺はこう思ってたんだ。あえて何も言わなかったけど」とか「本当はお前が秘密にしていること、知ってたけど知らないふりしてたんだ」っていうとき、ありますよね?

 「仲が良いから隠し事は一切しない!」っていうこともあるでしょうが、発言のタイミングを逸してしまうこともあるでしょうし、仲が良いからこそあえて言わなかったこともあるでしょう。

 そして、久しぶりだからこそ、そういう「あのとき実は」なことに触れることができるようになるんです。

 久しぶりに村上春樹を読んでよかったと思える作品でした。