【感想】葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午):ミステリー好きなら避けられない作品
こんな人におすすめ!
- 叙述トリックの小説を読みたい人
- ミステリー好きだけど、「警察や探偵が殺人事件の捜査をする」っていうのに飽きてきた人
- 悪徳商法を懲らしめてやりたいと思っている人
見事に作者に騙されました!
叙述トリックのお手本のような作品です。
これは読んでよかった。もう一度読みたいし、読まなければならない作品。
今回もネタバレなしで感想を書いていきます。
あらすじ
内容(「BOOK」データベースより)
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。
話題になりました
この作品は、↓のように発刊された当時はかなり話題になったようです。
- 第57回日本推理作家協会賞受賞
- 第4回本格ミステリ大賞受賞
- このミステリーがすごい! 2004年版第1位
- 本格ミステリベスト10 2004年版第1位
- 週刊文春 推理小説ベスト10 2003年度第2位
この小説が発行されたのが2003年っていうのが驚きです。テツandトモの「なんでだろう」が流行語大賞を獲得した年らしいです。
僕はまだ学生で、小説を読むこともほとんどなかったんですが、かなり話題になっていたんですね。
見事に騙されます
「作者の騙し方がひどい」、「アンフェアだ」という意見もネットでは見られますが、基本的には高い評価がされています。
確かに読み返してみると、ミスリードを招く記述がたくさんあって、「ずるいなあ」っていう思いもありますが、それよりも「そういうことだったのか!」という驚きや、「こんなところでも読者を騙すのか」といった感動のほうが大きかったです。
「叙述トリック」っていうのは文の表現によって読者のミスリードを誘っていくものなんだと思っていましたが、ストーリーの進め方、全体の構成からもこんなに騙されるものなんですね。
ただのミステリーではない
良い意味で「これは本当にミステリーか?」という疑問も残ります。
入口はミステリーという看板でいいんですが、一度読み終えると、恋愛小説にも見えてきます。というか恋愛小説そのものです。
叙述トリックという点ではミステリーに分類されるんですが、「悪徳商法を働いている会社に乗り込む」っていうのがメインストーリーで、主人公の過去の話、第三者の女性の話(これがメインストーリーにどうやって絡んでくるかも見ものです!)、主人公の友人の話(これもどうやって絡んでくるのか要注目です!)が間に挟まれ、話は展開していきます。
ミステリーに限らないんですが、良い小説って、どこにも無駄がないんですよね。
例えば、Aさんが一人称の章があって、その後、まったく関係ないBさんの話が展開されたとしても、それらは独立した話ではなく、読み進めるうちに繋がっていく。
「離れた点と点が実は繋がっていた」ということが分かると、やっぱりテンション上がってしまいますね。
繋がること自体は予想しているんですが、「どうやってメインの話に絡んでくるんだろう」っていうのが分からず、それがきれいに繋がったときは鳥肌ものです。
おしゃれなタイトルとその意味
タイトルについては言うことありませんよね。
満場一致で小説界一のおしゃれタイトルだと思います。
タイトルに惹かれて買ってしまうと、連想するイメージと最初は違う印象を抱くかも知れませんが、それは読み終わってからのお楽しみですね。
しかし今も桜は生きていると俺は知っている。赤や黄に色づいた桜の葉は、木枯らしが吹いても、そう簡単には散りやしない。(P.469)
普段、僕たちが桜を見るとき、葉桜になっていると「残念だ」、「来年はもうちょっと早く見に来ないと」と思いますが、桜はいつでも桜なんですよね。
誰も見ていないときでも葉をつけ、紅葉していきます。
誰しもが魅力的だと思う時期を過ぎてもなお、誰しもが輝こうと努力しているのかもしれません。
さいごに
ネタバレを聞いてしまうとこの小説の楽しみはなくなってしまうので、ぜひ、ネタバレを聞かずに読んでみてください♪
本当におすすめの一作です。
★叙述トリックといえば、さよならドビュッシーもおすすめです!
★こちらも話題になったミステリーです!