読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。

体は社会人、心は自由人。三十路間近のネコ好き。日記や日々考えたこと、社会問題、ときどきサッカー。

【感想・書評】告白(湊かなえ):イヤミスの原点を知りたいならこれ!

読書

こんな人におすすめの作品です。

  • 湊かなえさんが気になっているけど、どれを読めばいいか分からない人
  • 「教師は聖職だ」という意見に違和感を持っている人
  • ちょっと違った小説を読みたい人

 

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 

 (「BOOK」データベースより)

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。

 

目次 

 

デビュー作ゆえの力強さ

デビュー作であるがゆえ、表現がイマイチな部分があるのは否めませんが、デビュー作であるがゆえに力強さが出ることもあります。

「星々の船」で直木賞を受賞した村山由佳さん(「おいしいコーヒーの入れ方」も有名です)のデビュー作は「天使の卵‐エンジェルス・エッグ」でしたが、あれもすごく力強かったですね。

小説としての質は明らかに「星々の船」のほうが上なんですが、言い表せない力強さが「エンジェルエッグ」にはありました。

読者をぐいぐい惹きつけるというか、ページをめくらす推進力というか、物語から離さない吸引力というか。

表現が稚拙なところや工夫が足りないと感じる部分もあるにはあるけど、その分、力強さを感じたんですよね。

 

「告白」も村山由香さんのそれと同様、小説家としてはまだまだなのかもしれませんが、次のページを読ませる力がすごいです。

どんどん物語に引き込まれていきます

読むのが速い人なら2~3時間ぐらいで一気に読み切ってしまうかもしれません。

そんな力強さを持った作品です。

 

イヤミスの出発点

「イヤミス」というのは、後味が悪いミステリーのことです。

ドラマでも映画でも小説でも、物語って基本はハッピーエンドですが、子どもの頃はそのことに疑問を持っていました。

『都合の良いハッピーエンドじゃなく、現実的なエンディングや、あえての悲しい結末も見たい』って。

嫌な子どもですね(笑)

大人になって『やっぱりハッピーエンドが安定だよな』と思うようにはなりましたが、たまには「イヤミス」もいいもんです。

 

そんな後味が悪い話を書くのが湊かなえさんですが、彼女の出発点である作品ですので、湊さんのほかの作品を読んで気に入ったなら、ぜひぜひ読んでほしいです。

 

噛み合わなさが魅力 

本作品は、自分の子どもを学校内で亡くしてしまった中学校の女性教師がホームルームで、その真相を「告白」することで始まります。

語り手が「クラスの女の子」、「犯人」、「犯人の家族」と移っていき、徐々に事件の全体が明らかになっていくようになっています。

 

「探偵や警察が殺人事件の調査をする」というのがミステリーの定義であれば、本作品はミステリーではありません。

「犯人は誰か」、「どうやって殺されたか」というのはだいたい第一章の主人公(子どもを亡くした女教師)の独白で明らかにされますが、第二章から始まる他の人の「告白」によって、ちょっとずつ変わっていくんですよね。

『あれ?最初はこうやって言ってたのに、Aの証言を聞くと本当はこうなのか?大筋は合ってるけど微妙に違うぞ』ってな具合で、徐々に真実が明らかになっていきます。

 

そして、「徐々に真実が明らかになっていく」と書きましたが、そうとも限らないのがおもしろいところ。

この小説はそれぞれの「告白」で進んでいくので、彼らが言っていることが真実かどうかが分からないんです。

大筋ではウソを言っていないんだろうなとは思うんですが、どこかでウソを織り交ぜているんだろうなっていうのは感じます。

 

「告白」っていうのは、あくまでもそれぞれの主観なんですよね。

人間、自分のことを正しく認識できているとは限らないし、むしろ自分のことだからこそ認識できていない部分があるといえます。

『こいつ、自分の告白のターンでは都合の悪いことは隠してやがったな!』なんてことはよくあります(笑)

読み進めるごとに、『こいつ!また都合の良いように話してたな!』って思うこと思うこと。

それぞれの認識が噛み合っていない具合が噛み合っているというか。

噛み合っていないからこそ、噛み合っているというか(笑)

表現するのが難しいですが、読んでもらえると分かります。

 

教師は聖職だと誰が決めた?

僕がこの小説を好きな理由の1つはこれです。

主人公の女性がいわゆる教師っぽくないんですよね。

 

世の中では、先生というのは「聖職」と呼ばれることもあります。

「子どものためにがんばるんだ!」という高潔な理念を持って、時間外手当など出なくても24時間、教師を全うする。

 

現実にはそんな教師ばかりでないにしても、本作品ほどドライな先生も珍しいかもしれません。

ドライというより、「すごく人間らしいな」と僕は思いましたが。

小説の冒頭では「貧乏だったから先生になった」とも生徒に対して言っていますし、すごく人間っぽくて、自分の気持ちをむき出しにしていて好感が持てました。

 

まとめ

『湊かなえさんの一番のおすすめを教えてほしい』と言われても本作品を勧めようとは思いませんが、ほかの作品を読んで彼女のことが気に入ったなら、絶対に読んだ方がいい作品だと思います。 

湊かなえの原点ここにあり。