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雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。

体は社会人、心は自由人。三十路間近のネコ好き。日記や日々考えたこと、社会問題、ときどきサッカー。

【感想・書評】贖罪(湊かなえ):悩みを抱えたまま大人になった少女たちの苦悩

読書

湊かなえさんの「贖罪」を読みました。

湊かなえさんのかなり初期の作品になります。

デビュー作である「告白」、後味が悪い「少女」に続く3作目となる本作品。

初期の作品ながら真実が小出しにされていくことで次が気になり、一気に読ませる力がありました。

 

 

あらすじ

贖罪 (双葉文庫)

贖罪 (双葉文庫)

 

内容(「BOOK」データベースより)

15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った―あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は!?特別収録:黒沢清監督インタビュー。

↑にも書いてあるように、本作品の主人公の4人は犯人と会話もしていて、顔も見ているんですよね。

でも、彼女たちは誰ひとりとして犯人のことをはっきりとは覚えていないんです。

そのせいなのか、いっこうに犯人は見つからず。

 

その状況に黙っていなかったのが被害者の母親

事件から3年も経つのに犯人が見つからず、犯人の顔を思い出せない4人を家に呼び出し、このようなことを言います。

わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。

この発言から、それぞれの人生が狂っていくこととなります。

 

ミステリーとして

この小説は、主人公の4人がそれぞれ第1章から第4章で、被害者の母親が第5章で独白するかたちで進んでいきます。

第1章から第4章で散りばめられた謎が最終章で回収されるのは見事でした。

湊かなえさんの作品は、殺人事件が起きたからといって「犯人は誰だ」というところには焦点がなかなか当たらないのであまり期待していなかったのですが、2人目の独白から少しずつ明らかになっていきます。

 

この「少しずつ」っていうのは、本当に「少しずつ」なんですよね。

第1章ではまったく触れられなかったので、「やっぱり犯人は最後まで分からないんだろうな」って思ってしまうんですが、第2章の最後の最後で言及され、『ここで触れられたからには第3章でも出てくるんだろう』という期待をしてしまい、一気に読み進めてしまいました

この「小出し感」はすごく良かったです。

次が気になるかたちで章が締められるので手が止まりませんでしたね。

デビュー作の「告白」よりもミステリー色が強く、楽しんで読むことができました。

 

悩みを抱えたまま大人になった少女たち

主人公の4人はそれぞれが内面に問題を抱えています。

それは事件をきっかけにできたものもあれば、事件をきっかけに加速したものもあります。

それは親との関係であったり、兄弟との関係であったり、正直、誰しもが抱えている悩みなんでしょう。

ただ、一般的には成長するにつれ、自我を確立させるにつれ、それらの悩みや葛藤と向き合う術を学び、大人になるころには解放されているんだろうと思う。

しかし、彼女たちは悩み続けたままだった

それは、被害者の母から言われた言葉が原因だ。

また、その言葉を発した被害者の母もまた、過去に抱いた悩みを抱えたままだった

 

「Nのために」などはけっこう暗い過去があったり、少し現実感のない部分もありましたが、本作品はかなり僕たちの身近に感じられる悩みが描かれており、そういう意味では登場人物に親しみが持てるかとも思います。

 

子どもにとっての大人とは

子どもにとっての大人っていうのは、同じ人間とは思えないぐらい影響力があります。

人は生まれたときはまっさらですが、周りの影響によりいろんな色がついていきます。

大人の何気ない一言というのは、それがちょっとしたものであっても、僕たちの奥底に色がついてしまうため、なかなか洗い流すことはできません

 

僕自身、子どものとき、特に小学生のときは先生の言葉は絶対だったという記憶があります。「先生が間違えるわけがない」、「大人が言っていることは正しいんだ」と思っていました。

 

本作品の主人公4人は、ただでさえ友達が変質者に殺されてショックを受けていて、なんとか忘れよう忘れようと努力していたなかで、母親からの言葉を浴びせられることとなります

今ならPTSDという言葉も広まってきましたし、このような事件があった後はしっかりとしたサポートがあるんでしょうが、彼女たちにはそういうサポートはなく、ただただ「忘れる」ことで対処しようとしたんですよね。

 

しかし、母親からの脅しによって一生忘れられないものとなってしまいます。

これが同年代に言われた言葉だったら、そこまでの影響はなかったんでしょうけど、やっぱり大人の言葉って重いんですよね。

実際、主人公の4人は大人になるまで、母親からの脅しを心に刻んでいくこととなってしまいます。

 

まとめ

僕の中では「告白」や「Nのために」と比べると劣ってしまうんですが、『「Nのために」の登場人物の気持ちがよく分からなかった』という人には、むしろこの作品のほうが楽しめるのかも。

読み始めると一気に読んでしまうと思います。

ぜひぜひ読んでみてください。

 

以上、本日もあめおど管理人がお送りいたしました。

デビュー作です。イヤミスの原点。

最近文庫化されました!イヤミスではないけど、かなりおすすめ!