雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。

体は社会人、心は自由人。三十路間近のネコ好き。日記や日々考えたこと、社会問題、ときどきサッカー。

【感想】山女日記(湊かなえ):心に背負った荷物との付き合い方

湊かなえさんの「山女日記」を読みました。

これも「望郷」と同じく、短編小説が集まったもので、これまたミステリーではありませんでした。

 

山女日記

山女日記

 

内容(「BOOK」データベースより)

私の選択は、間違っていたのですか。真面目に、正直に、懸命に生きてきたのに…。誰にも言えない苦い思いを抱いて、女たちは、一歩一歩、頂きを目指す。新しい景色が、小さな答えをくれる。感動の連作長篇。

 

これまたミステリーかつ長編を期待して読むと肩透かしを食らっちゃいます。

「望郷」と同じく非ミステリーかつ短編でした。

「望郷」が楽しめた方はこちらも楽しめますし、こちらが楽しめた方は「望郷」も楽しめる、そんな関係です。

 

本書に出てくる主人公はみんな、どこかしら不器用に生きています。

  • 自分のしたいことが見えない
  • 自分のことをちゃんと理解してもらえる人が現れない
  • 今までは自分の思い通りになってきたけど、いきなり大きな壁にぶちあたった

など。

 

人生において「悩みがすべて解決する」ってなかなかありません

1つ解決すれば新しく別の悩みが出てくるし、そもそも1つの悩みと一生付き合っていかなきゃいけないっていう人も少なくないと思います。

そんなとき、それを「重い荷物だな」って背負っていくのも1つですし、楽しんで荷物をコロコロ転がしていくのも1つです。

 

僕たちの人生は誰に決められるでもなく、何らかの決まりがあるわけでもなく、基本的には自由に生きていくことができます。

社会で生きるうえでは気を使わなきゃいけないこともたくさんありますが、いつの間にか「自分ルール」を作っていることもあると思うんです。

そして、その誰にも見えない、自分しか知らない「自分ルール」に自分が苦しめられることも。

そういうときって、なかなか「自分ルール」を見直すことができないと思うんですよね。

「こうでなければならない!」って思い込みすぎて、あたかも聖書に書いてある尊い教えであるかのように考えてしまって

そして、そういうのって他者から気付かされることがけっこう多いと思います。

 

本書は、山に登るということを通じて(山に「誰かと」登るということを通じて)、そんな心の変化が描かれた作品となっています。

 

「告白」とか「Nのために」しか読んだことない人もぜひ一度読んでみてください。

 

以上、本日もあめおど管理人がお送りいたしました。

 

★★★湊さんのおすすめ作品★★★

デビュー作です。イヤミスの原点。

山女日記を楽しめた人にはおすすめ。