雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。

体は社会人、心は自由人。三十路間近のネコ好き。日記や日々考えたこと、社会問題、ときどきサッカー。

スキーバス事故から消費者の責任について考えてみる

車がたくさん走っている道路

『またか』と思ったのは僕だけではないはず。

長野県軽井沢町の国道で、スキー客を乗せた大型バスがガードレールを突き破って転落し、多数の死傷者を出しました。現場に目立ったブレーキ痕はなく、道路の凍結もなかったようです。

この事故に関する記事を見てみると、ツアーを企画した旅行会社「キースツアー」、事故を起こしたバス会社である「イーエスピー」、事故を未然に防げなかった行政の責任を問うているものがほとんどですが、もう少し多角的に見たほうがいいんじゃないかと思い、記事にしました。

 

 

消費者基本法とは

「消費者基本法」というのをご存知でしょうか。

昭和30年代の高度成長に伴い、消費者問題が社会問題として顕在化したことを受け、昭和43年に「消費者保護基本法」が制定されました。

事業者を規制することで消費者を保護しようとするものでしたが、その後、規制緩和や企業の不祥事の続出、トラブルの急増、その内容の多様化・複雑化など、社会情勢が大きく変化したため、消費者の保護だけでなく自立支援が求められるようになり、平成16年に全面改正され、「消費者基本法」ができました。

この法律によって、情報を持っていない消費者が保護されるのは当然ですが、一方で企業側だけではなく、消費者に対しても一定の責任を負わすことになっています。

具体的には以下のような内容となっています。

消費者基本法

第七条  消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。

 

また、国際的にも以下のように定められています。

1982年には、国際的な消費者団体である国際消費者機構(略称CI:Consumers International)が、消費者には権利と同時に責務があるとして、次の消費者の8つの権利と5つの責務を提唱しています。

消費者の5つの責務

  • 批判的意識 (Critical Awareness):商品やサービスの用途、価格、質に対し、敏感で問題意識をもつ消費者になるという責任
  • 自己主張と行動(Action):自己主張し、公正な取引を得られるように行動する責任
  • 社会的関心(Social Concern):自らの消費生活が他者に与える影響、とりわけ弱者に及ぼす影響を自覚する責任
  • 環境への自覚(Environmental Awareness):自らの消費行動が環境に及ぼす影響を理解する責任
  • 連帯(Solidarity):消費者の利益を擁護し、促進するため、消費者として団結し、連帯する責任

契約と消費者

 

つまり

『消費者が安全に商品を使う権利というのも確保されないといけないけど、自分の身は自分で守る、ちゃんと自分の頭でも考えて、商品を使いなさい』

ということです。

 

ワタミで飲まない会とは

そして、日本人がその責務を果たしたのが居酒屋ワタミの例です。

matome.naver.jp

消費者としてワタミを選ばないということ。

居酒屋ワタミがいわゆるブラック企業であり、従業員が自殺するまで追い込んだということで、それに対して日本人が立ち上がったということです。

「日本人が立ち上がった」というと大げさですが、消費者が自ら考え、「安いものを選ぶ」、「質の良いものを選ぶ」といった基準以外に、それぞれの社会的責任を考え、行動したすごく立派な例だと思います。

 

自由と責任

「自由とは、自らに由ること」という考え方があります。これは、

『やったー!自由になったから何をしてもいいんだぜー!ヒャッハー!』

というのは正しくなく、

「自分の足で立って、自分の頭で考える」ということを示しているということです。

「好きなことができるぜ!」というニュアンスではなく、あくまでも「自立」というのが前提にあります。

 

例えば、大学生というのは、高校卒業まで手厚く守られてきた環境とは違い、自由になんでもできます。

小学校や中学校は住んでる場所によって、通う学校が決まります。学ぶ科目も決まっていますし、宿題をやってこないと怒られるでしょう。

それに比べると、大学の自由とはすばらしいですね。授業に行かなくても何も言われないし、宿題をやってこなくても基本は怒られない。

バイトに精を出してもいいし、世界一周とか行っちゃう人もいます。

ただ、そこには責任が求められるんですよね。授業に行かずに単位を落としても誰も助けてくれないし、世界一周で訪れた国でスリに遭うかもしれない。

自分で自分の身を守らなくてはいけないということです。

 

安さに疑いを持つこと

旅行会社は「激安」をうたい文句に、スキーやスノーボードの日帰りや1~2泊のバスツアーを販売していた。安さを強調するあまり、企画に無理はなかったのだろうか。これらについても精査してほしい。大勢の人の命を預かるバスは、乗客を安全に目的地まで送り届けるのが最大の使命である。バス会社はもちろん、旅行会社ももう一度肝に銘じたい。

鹿児島の情報は南日本新聞 - 社説 : [ツアーバス事故] 安全策は十分だったか

この記事にあるように、今回のツアーは「激安」だったようです。

この新聞記事では旅行会社、バス会社の責任のみ追及していますが、消費者、利用者としてはどうだったんでしょうか。

『安いからには何か裏があるな』、『安いってことはどこかで無茶してるのか?』という考えは頭に浮かばなかったのか

浮かんだとして、なぜそれでもこのツアーを選んだのか。

旅行会社、バス会社が悪いのは確かで、利用者には何の罪もありません

ただ、与えられた商品を無批判に受け入れてしまうと、こういう事故が起きたときに自分が悲惨な目に遭ってしまうということです。

 

消費者の責任と規制緩和

安いのはうれしいことです。

普段は100円で売られていたものが、ある日50円で棚に並んでいたら単純にうれしいですよね。

しかし、安いということには理由があるんです。

「企業努力」で解決できるものもあれば、それを飛び越えた安さというのもあります。
それは「従業員の給料を不当に低くする」、「安全管理について手を抜く」、「2回チェックしないといけない工程において、1回のチェックに短縮する」などなど。

 

理由が分からない安さの裏ではあなたの知らない誰かが泣いているか、もしくは自分が安全が脅かされているということです。

なぜブラック企業がなくならないかというと、それを利用する人がいるからです。

「誰が悪いか」と問われれば、当然ブラック企業そのものなんですが、ビジネスモデルが破たんしない限りは続いていくでしょう。

消費者として、そういう企業を淘汰する意味でも、自分の身を守る意味でも、もっと企業に対して批判的になる必要があるのだと思います。


また、そうでないのなら、規制緩和など進めていくことはできないでしょう。

理想は「規制緩和を進めることで、企業努力によって業界としてのコストダウンを進め、より安く消費者が利用できるようにする。ただし、安全面は万全とする。」という状態です。

しかし、「安かろう悪かろう」でいいという人はいますし、バス会社が乱立する状況で行政の監視が行き届くとは思えません。

 

どちらかなんですよね。

行政にすべて監視してもらうため、規制を厳しくするのか、もしくは、

安く利用する権利を得るため、消費者が自分で考えることを受け入れ、規制緩和を進めるのか。

 

まとめ

本当にこの事故で犠牲になった乗客の方々、またある意味では被害者でもあった運転手のお二人にはお悔やみ申し上げます。

この犠牲を前にして、本気で問題に取り組んでいくのであれば、認めなければなりません。

安さと安全は両立しない、ということに。

そして、消費者である僕たちにできることは、安いことに無批判に喜ばず、疑いの目を持ち、自己責任で利用していくということです。

 

この記事を読んだみなさんだけでも、自分の命を守るためにも、批判的な視点を持ってみてください。

 

以上、本日もあめおど管理人がお送りいたしました。

 

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