「電波停止」のニュースにおける報道の仕方とその真意について
大臣などの国会議員の発言の一部が取り上げられ、曲解されて伝えられるというのは頻繁に起こりすぎて、ニュースの価値自体に疑問を抱かざるを得ません。
過去には「女性は産む機械」というところを取り上げられてかなりバッシングを受けたという例もありました。
「電波停止」の報道
今日見かけたのはこちらのニュース。
総務相、電波停止の可能性に言及 公平性に欠ける放送に
高市早苗総務相は8日の衆院予算委員会で、放送局が政治的な公平性に欠ける放送を繰り返した場合の電波停止の可能性に言及した。「行政が何度要請しても、全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない。将来にわたってあり得ないとは断言できない」と語った。
これは日経新聞からの引用ですが、朝日新聞とかもこのような表題になっています。
標題だけ見ると、「政府が電波停止を実行するのか!?」っていう風に見えてしまいますし、この記事を読んでもその発言の全体は見えてきません。
印象操作をしようとしているのか、キャッチーな見出しにしてアクセスを稼ぎたいのかは分かりませんが(笑)、釣りタイトルにしか見えないですよね。
事実、ヤフーニュースのコメント欄を見ると誤解している人も少なくはありません。
全文起こしから見る概要
さて、こういうときに便利なのがこの答弁を文字起こししているサイトです。
今回はtogetterで見つけました。
この中から重要な発言を取り出してみると、こんな感じになります。
質「ですからもし、ここで明確に否定していただきたいんですけれども、この放送法の174条の業務停止や電波法76条についてはですね、こうした4条の違反については使わないということで今もう一度明確にご発言いただきたいです」
答「公共上の電波を使ってまったく改善されない繰り返されるという場合にまったくそれに対してなんの対応もしないということをここでお約束するわけにはまいりません。まあ、ほぼ、そこまで極端な、電波の停止にいたるような対応を放送局がされるとも考えておりませんけれども、法律と言うのはやはり法秩序というのをしっかりと守ると、で違反した場合には罰則規定も用意されている事によって実効性を担保すると考えておりますので、まったく将来にわたってそれがありえないという事は断言できません」
要約すると
質:「法律に規定されている罰則を適用しない」と宣言してくれ
答:可能性は否定できない
という感じですよね。
可能性と蓋然性
つまり、報道されている
「行政が何度要請しても、全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない。将来にわたってあり得ないとは断言できない」
というのは、現時点で、どこかの局のことを具体的に挙げてなされた発言ではなく、あくまでも可能性の話をしているんですよね。
あくまでもただの「可能性」でしかなく、「蓋然性」があるわけではないんです。
ただ、「possibilityに言及せざるを得なかった」だけであり、「probabilityに積極的に言及した」わけではありません。
「言及」というと、「自らが積極的に言及した場合」もあれば、「放送法について聞かれたので、回答した場合」も含まれます。
当然、法律で定められている以上、「何があっても罰則を適用しない」ということを言えるわけがありません。
「大臣であるから言えない」わけではなく、ひとりの国会議員である質問者であっても同様です。
こんなレベルの質問をすること自体、バカみたいな誘導尋問にしか見えません。
まとめ
ニュースというのは字数制限もありますし、長くなると読まれなくなるという問題もありますから、事件が要約されて報道されるというのは仕方ありません。
釣りタイトルをつけるのも商売をしている以上、批難はできないかもしれません。
ただ、大事なのはそれらを鵜呑みにせず、一次ソースを探したり、報道とは違った見方をするなど、見る側の努力なんだと思います。
以上、本日もあめおど管理人がお送りいたしました。
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